◆もろみの圧搾◆
■圧搾・上槽
清酒もろみを圧搾ろ過し酒と粕に分離することを圧搾または上槽という。以前はもろみを酒袋に詰めて槽の中に並べて 搾ったので,上槽とか酒揚とか槽掛けという言葉が使われている。もろみは始め酒袋に詰めて揚槽に並べて積重ねる。 最初に出てくる酒は白く濁っているので,これを小さな別の桶にいれておいており引きをしたり,もろみタンクに戻して, もう一度搾り直したりする。この最初に出てくる白濁した清酒を荒走りという。もろみを詰めた酒袋を積重ねる。 揚槽―ぱいになると槽のうえにかさを乗せ,かさの中で酒袋を積重ねる。さらにーぱいになると,その上にまたかさを 乗せて酒袋をーぱいに積重ねる。この頃になると,きれいな酒が自然の力で垂れて出てくる。槽の中の袋の入味が 減ってくると,かさを順次取除いていく。かさを取り外してからは押蓋をのせて圧搾にかかる。圧力をかけずに自然に 垂れる間を押槽という。翌日揚槽の中の酒袋を責槽に移して,袋を積替えて再び圧搾する。この時には槽の内側の 周囲を少しあけて袋をタテ・ヨコ交互に積重ね,順次圧力をかけて高圧でしぼる。荒走後槽から出る酒を中垂れと称し, 責槽から出る酒を責めという。責めは少し品質が劣るので,中垂れと区別する場合もある。圧搾が終わると責槽から 酒袋を取り出して,袋の中の酒粕を取り出す。この仕事を槽おろしと称し,袋から酒粕を取り出すことを離しという。
■圧搾室・槽場
もろみを圧搾して酒とかすを分けるのに用いる機械・器具を設置する室または場所をいい,上槽室ともいう。 自動もろみ圧搾機を用いる場合は本体以外に空気圧縮機,圧力自動調節機,乗口酒受けタンクなどを置き, さらにかすを処理する広さが必要である。 酒槽を使用する場合は灘の標準では揚槽2基,責槽1基を使用するが,これに圧搾機・垂壷・かさ・盤木 などが付属し,酒袋からかすば放しを行うからこれらの作業を行える広さが必要である。 いずれの場合も大規模工場以外は特定した室を設けずに前蔵の一部で圧搾・上槽を行う場合が多い。
■酒槽(槽)
 もろみの入った酒袋を重ねて入れ,これを搾る槽を槽(ふね)または酒槽という。 槽は古来木製であったが,近年鉄筋コンクリート・ステンレス張り・ 樹脂ライニング製のものが多く使用されている。大きさは,幅70〜73cm, 深さ90〜100cmとほぼ一定であるが,長さは仕込みの大きさにより 200〜360cmといろいろある。木製の槽は欅・桂・いちょうなどの堅く 香気の悪くない木材が使われ,槽の槽の上縁部(かばちという)には桜材が 多く使用される。槽の内側面には,酒袋のさがりをよくするために竹のすのこを はめ込み,底面には,木の?板を敷き,溝をつけて銚子口に酒が集まるように なっており,流下する酒を垂壷で受ける。 最初は槽の中に長さ方向に対して直角に酒袋を並べ積重ねていくが,酒袋の高さが槽の上縁に達すると, 槽にちょうど合うように作られた笠枠を槽の上に乗せて,さらに酒袋を積重ねる。これをかさまたは層枠という 。かさは台湾桧などの木材で作られ,普通1〜2個で一組となっている。上槽後4〜6時間すれば,酒袋より酒が自然に 流失して,袋の高さも低くなるので,かさを取り外して圧搾を始める。一昼夜過ぎると,清酒の流失量は少なくなり 部分的に搾りきれない個所ができるので,槽直しといって酒袋を積替えて強い圧力でさらにもう一日搾る。 最初に搾る槽を水槽(揚槽)といい,槽直しの後に袋を積替えて搾る槽を責槽という。責槽では,袋を縦横交互に並べる。 責槽から出る清酒の量は全体の約5%で,水槽に比べて質も落ちる。普通水槽2〜3槽に対して責槽1槽の 組合わせとなるが,小規模の蔵では水槽と責槽を1槽で間に合わせることもある。また2槽の水槽の1槽を責槽として 使用することもある。
■酒袋
もろみを入れて酒を搾るのに用いる5〜9lg容の袋である。戦前は,木綿の太糸を荒めに織った袋を夏季にに渋引き して使用したのが,戦後ナイロン,テビロンなどの化学繊維のものができて,丈夫で手入れが簡単であり, かす離れがよい所からその使用が増加した。圧搾終了時には,酒袋の標準的な所要枚数は1個半仕舞(2,250kg) で約3,000枚である。現在では自動もろみ圧搾機が普及して,酒袋を用いて上槽する酒蔵は少ない。 木綿製の渋引きしたものを渋袋とも呼ぶ。
■かんかん式(天秤式)圧搾法・天秤

もろみの圧搾に際して加圧の方式にはかんかん式・螺旋式・水圧式 などがあるが,かんかん式は最も古いもので石掛式とも呼ばれる。 連続的に次第に強く酒袋に圧を与えるので,袋の損傷は少ないが 圧搾力は弱く,場所を広く取るうえに危険性も大きい欠点があり, 次第に螺旋式を経て水圧式が採用されるようになった。
男柱(たてげ・牡牛) かんかん式圧搾の支点となるもので欅の根付けを使用し,根の部分を地下に深く埋めて固定する。 太さ45〜48cmで,地上部の槽のかまちより少し高い所に締木の根元を差し込む長方形の穴がある。 男柱は責槽の中央側面に位置する。
締木(天秤・天秤棒・撥棒) 長さ約8mで細い部分の末端は男柱の穴に挿入できるように長方形となっている。男柱の穴と接触部に 滑り止めのためにクサビ型の木を入れる。これを鯱という。
ツク(ダボドメ) 石を掛ける部分の上につけた約7個の堅牢な突起で,釣縄がすべるのを防ぐ,圧搾に際して力点となる部分である
掛石 締木の先に掛ける笹約30〜45cmの丸い自然石で,1個約30kg,総重量1,500〜2,250kgである。 おもしともいう。 釣縄 掛石を釣る縄で,径5〜5.5cmの麻または藁の太く丈夫なものを用いる。
■阿弥陀車(阿弥陀)
重量物をわずかの力で上げ下ろしするための道具で,図のような八角形の車輪で構成され,その形が阿弥陀像の光背に似ているのでこの名がある。2種類の用途があり,@槽場の梁に備えられ旧式圧搾機の撥棒を吊上げる場合と,A大蔵2階の梁に備えられ,桶瓶を2階に吊上げ,吊降ろす場合とがある。 阿弥陀車は滑車の原理に従って重量物を扱うもので,細軸に巻いた綱は太く重量物を吊る役目をし,車輪部の外側に巻いた綱は細く,この綱を引いて軸を回転させる。これらの綱を「阿弥陀車の綱」または「阿弥陀の綱」と称する。 因みに木桶を用いていた時代は,仕込み桶と貯蔵桶は区別して使用され,冬季仕込み期間中は手入れを済ませた貯蔵桶が2階に引き上げられ,逆に夏季は仕込桶が2階に引上げられていた。
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